所属選手の全員が1型糖尿病である、プロフェッショナルサイクリングチームであるチーム ノボ ノルディスク。実は1型糖尿病のプロスポーツ選手は珍しくないのです。つまり糖尿病に負けることなく、自身の可能性と、おそらく同じ病気とともに生きる人たちを勇気づけるため、厳しいプロの世界で挑戦を続けるアスリートが少なからず存在しているわけ。そしてチーム ノボ ノルディスクはロードレースのチームです。これは同社が自転車大国であるデンマークの企業であるからかもしれません。このプロフェッショナルサイクリングチームが旗揚げされた理由は、ノボ ノルディスク、そしてチーム ノボ ノルディスクの共同設立者 兼 CEOのフィル サザーランド氏の両者が、糖尿病とともに生きる世界中の人々を元気づけ、治療に積極的に取り組み、それぞれの人生の目標に向けて生きていくことを応援するという共通のビジョンを持ったからです。こうして遡ること12年前の2012年、チーム ノボ ノルディスクが設立されました。
日本独自のムーブメント
本コラム前編に記した通り、糖尿病は大別して1型と2型、そして小児糖尿病があります。残念ながら糖尿病とともに生きる人たちは世界中に数多く存在し、そのなかには明日の未来を背負う子供たちも少なくありません。その子供たちをケアするムーブメントは世界中で行われていますが、我が国では各都道府県にある小児糖尿病協会が主催となり、また公益社団法人 日本糖尿病協会、そして社団法人 日本糖尿病学会などが共催するかたちで、小児糖尿病と生きる子供たちを対象としたサマーキャンプを、子供たちの夏休みである8月に全国各地で開催しています。今年もサマーキャンプは全国で開催され、1型糖尿病とともに生きる小中学生50名が元気に参加。ARGON18もこれを盛り上げるべく、お手伝いを行いました。
サマーキャンプとは
子どもたちの糖尿病は、大人の糖尿病と異なり細心の注意が必要で、とりわけメンタルのケアが重要です。小中学校に通う日常のなかで、彼らは1日に5~7回、自分の血糖値を測定し、それに基づいてインスリンを1日に2~4回、毎日「自分で注射」しなければなりません。血糖値は食事や運動と密接な関係にありますので、食事摂取も炭水化物の量、並びに栄養バランスを考え、運動に当たっても消費エネルギーを理解する必要があります。これを年端も行かない子供たちが自分の判断で行う必要があるのですが、果たしてどこまでできるでしょうか。「自分だけがコントロールを強要されているのではないか」という孤独とストレスをもたらすことは想像に難くありません。そしてともすれば、コントロールの乱れる生活を送りかねません。そこで、1型糖尿病のこどもたちの仲間づくりや勇気づけ、正しい教育、自立を目的として、野外の自然環境のなかで簡易素朴な生活を通して行われるのが、小児糖尿病サマーキャンプです。
ノボ ノル ディスクとARGON 18
糖尿病の子供を持った親たちの中には、病気が発症したことに対して自責の念をもち、さらには将来の不安などから子供達に対して過保護・過干渉となり、子供の自立を妨げるように働くことも少なくありません。サマーキャンプは子どもたちだけでなく、親御さんも参加するメンタルケアのプログラムであり、このような社会的なムーブメントが持つ重要性がサマーキャンプの本質です。では、ここにノボ ノルディスクやARGON 18は、いったいどのように関係するのでしょうか。
ジャスティンの時間
研修的なものは座学が続けばどうしても飽きがきてしまいます。大人だってそうなのだから、子供たちはなおさら。そこで登場するのがこのお方、オーストリア人のジャスティン モリス氏。モリス氏は元チーム ノボ ノルディスクの選手で、サマーキャンプではお馴染みのナイスガイ。長身でサイクルジャージに身を固めてARGON 18に乗って登場するジャスティンに子供たちは大喜び。にわかにジャスティンコールが沸き上がり、盛り上がります。そして始まるジャスティンの時間。彼もプレゼンテーションを行うのですが、自分の経験を元に、さまざまなエピソードを織り込み、面白おかしいトークを展開します。言語は英語で通訳を介しますが、陽気なキャラクターもあって、切れかけた子供たちの集中力も見事に復活。
続いてジャスティンはZwiftでバーチャルライドを披露。元選手の迫力あるペダリングに子供たちの目は輝きを増します。表示されるワット数を見て、わけもわからず「おー」と驚く子供たち。用意した小ぶりのフレームには、次々に乗りたいという子供が申し出て、なんとも微笑ましい。こうした経験が、これからの彼らの人生でプラスになることがサマーキャンプの目的でもあるのです。
彼らの短い人生経験のなかで、長身でフレンドリーな自転車選手とのコミュニケーションは、深く心に刻まれるはず。そしてジャスティンと同じジャージをまとったチームの選手たちが、今年も10月、第3週の週末に、宇都宮の街を、宇都宮の森のなかを駆け抜けます。そのリアルタイムな中継を、後日のニュースを、どれだけの子供たちが見るのか。それは定かではありませんが、モノやコトを伝えるとはこのようなことが大事で、この点、欧米の文化はまだまだ見習う点が多いです。そして、このサマーキャンプに参加した子供たちのなかから、明日のノボ ノル ディスクの選手が生まれたとしたら。それってすごく素敵なことだと思うのです。
10月、第3週の週末に。今年もチーム ノボ ノルディスクの選手たちは、彼らの生きざまを存分に魅せてくれることでしょう。
ノボ ノルディスクはジャパンカップ森林公園会場にブース出展を行います。ARGON 18でのZwift体験も行いますので、会場にお越しの際は覗いてみてください。